【レシピ】希須林っぽい担々麺を作った話
「ラーメン二郎はラーメンではなく二郎という食べ物だ」
というラーメンマニアの間で有名な言葉がある。
じゃあ、「担々麺」はどうだ。
あれはラーメンと呼んでいいのだろうか?
少し前に某グルメ投稿サイトであるカキコミを見た。
「ラーメンを食べたいって気分の時に担々麺は選択肢に入らない」そんな内容だった。
それ、すごくわかるわー、と思った。
矢野顕子さんも多分わかってくれると思う。
担々麺には中華スパイスの痺れや辛さ、ゴマの香り、油が混然一体となって攻め込んで来る他のラーメンにはない独特の重さがある。
丼ぶりに広がる荒涼とした赤茶色のスープに浮かぶ具はチンゲン菜にひき肉ぐらいで逃げ場は少ない。
こちらも「いざ食わん」と腹を決めて覚悟して臨まないとやられる。
まあやられはしないけどそこには戦いがある。しんどい。
聖徳太子は言った。和を以って尊しとなす、と。
ラーメンに求められるのも戦いではなく和の心ではないだろうか。
そもそも四川料理人の陳県民氏が汁無し麺を日本人の口に合うように辛さを和らげて改良されたのが担々麺のルーツらしい。
もともと四川料理の麺料理のひとつという位置づけだったのだ。
そういう歴史的観点から見ても、戦前に日本に渡ってきて日本の食文化に根付き混ざり合い長い時間をかけて徐々に進化してきた「ラーメン」の系譜とは少し毛色が違う気がする。
しかしラーメン自体が多種多様化するこのご時世。ラーメン専門店のメニューに担々麺の名を見かけることが多いのも事実。
だとすると担々麺は世間一般的にはもう既にラーメンとして市民権を得ているのかもしれない。
となると川崎発祥の「ニュータンタンメン」もやはりラーメンと呼んでよいのだろうか。はたまた激辛マニアに愛される「中本」はどうなんだと・・・
・・・・・・
うーん、もうどっちでもええがな。
前置きが無駄に長くなってしまったが急に担々麺を食べたくなる時がある。
先日久しぶりに担々麺スイッチが入ったので赤坂の有名店「希須林」に行った。
注文したのは普通の担々麺。
スープを一口飲むと芝麻醤のまろやかなゴマの風味の中に程よい辛さを感じる。
鶏がらに豚骨も使われているのだろうかベースのスープにしっかりとしたコクがある。
そして炒めたもやしとニラがたっぷり入っていてシャキシャキ。
これがこってり感と辛味を中和してくれる。
ラー油と花椒も抑え気味だから一般的な担々麺と違って食べててツラくない。
むしろ優しい。
ランチタイムは無料の白飯をスープと一緒にかき込むとこれまたうまい。
麺は中細麺で柔めの茹で加減だったが全体的に丁寧に作られた担々麺でおいしかった。
日本人向けにチューニングされ計算して作られた一杯だと思う。
少々ハードルは高いが今回はこいつをお手本に担々麺を自作してみることにする。
材料
材料
※3人前
<タレ>
芝麻醬* 80cc
豆乳 50cc
醤油タレ* 大さじ6
砂糖 大さじ2
酢 大さじ1
香味油*
ラー油 少し
花椒 少し
豆板醤 少し
*芝麻醬、醤油タレ、香味油の作り方は追って記載。
<スープ>
鶏ガラ+豚スープ 約1ℓ
<そぼろ肉>
豚粗挽き肉 180g
濃口醤油 大さじ1
甜麺醤 大さじ1
酒 大さじ1
みりん 大さじ1
砂糖 小さじ1
<野菜炒め>
もやし 1/2袋
ニラ 少々
乾燥キクラゲ 少々
塩こしょう 少々
下準備その1〜芝麻醬と香味油、醤油タレを作る〜
これまで担々麺は何度か作ったことがあるが材料に使う「芝麻醬」(チーマージャン)という調味料が買うと結構高い。
これ、調べてみたらごまと油があれば作れそうなので今回は自分で作ってみる。
芝麻醬を作るにはまず白ごま120gを炒る。
だんだんいい香りがしてくる。
10分ほど炒ったら火を止め粗熱をとる。
その後フードプロセッサーにかけてペースト状にする。
スープを飲んだ時の口当たりを良くするためできるだけ細かくした方がよい。
中華鍋で少し炒り過ぎてしまったせいでごませんべいのような香りがする。
ここに熱した油を加えて混ぜたものが芝麻醬になる。
今回はスープの香りを強くしたいので普通の油ではなく香味野菜で香味油を作ってそれを使うことにする。
香味油はサラダ油120cc、ごま油30cc、ねぎの青い部分とにんにく、しょうがひとかけの半分ずつをそれぞれスライスし中華鍋に入れて弱火で熱していく。
15分程したら火を止めてザルで漉す。
漉した香味油の半分(約70cc)をごまペーストに混ぜ込んで自作芝麻醬完成。
味見すると炒りすぎたせいか若干苦みがある。そのあとに胡麻の風味がブワっとくる。
苦みは要らないがいまさら仕方がない。このまま使おう。
続いて海老風味の香味油を作る。
残った香味油の半分を中華鍋に戻し干しえび1つかみとにんにく、しょうが残り半分づつを再び弱火で熱していく。
10分程火にかけたらまた漉す。
ここで使った海老はそぼろ肉に混ぜるので漉したあと捨てずに取っておく。
左が海老油、右が芝麻醬。左側は海老の香りが凄い。
希須林の担々麺は隠し味で具の肉そぼろに海老が入っていた。
海老の風味はそんなに突出してなかったのだが、うちでは嫁さんが海老が好きなのでアレンジして海老油をスープに加えて風味を強めてみることにする。
次に醤油タレを作る。
薄口醤油80cc、濃口醤油20cc、酒大さじ1、みりん大さじ1、干ししいたけ1個、昆布小1枚を鍋に入れて火にかける。沸騰する寸前で火を止める。
干ししいたけ、こんぶで和の心を追加してみた。
これで醤油タレは完成。
下準備その2〜そぼろ肉を作る〜
油をひいた中華鍋を火にかけて豚ひき肉を炒めていくる。
ある程度火が入ったところでエビ風味の香味油作りで使った海老も加える。
続いて濃口しょうゆ、酒、みりんを大さじ1ずつ、砂糖小さじ1を入れて混ぜ最後に甜麺醤大さじ1を加えて味を整え完成。
下準備その3〜中華麺を作る〜
せっかくなので東沢くんで多めに麺打ちした。
今回は特飛竜という麺専用小麦粉を使い、加水率33%で製麺。
お店みたいな中細麺が欲しいところだが切り刃がないので2mm×1.5mmの平麺っぽい感じで仕上げた。
下準備その4〜スープ〜
スープには豚骨の力強いコクが欲しい。
構想段階から豚骨スープから作るのはちょっとめんどいなー、と思っていたが、昨年末にスペアリブと鶏ガラで作ったスープの残りを1ℓほど冷凍していたのを思い出したのでここぞとばかりに使う。
多分ソーキそばか何かを作った残りだと思う。
ずっと冷凍庫の片隅で場所をとっていたので嫁さんから邪魔と言われていたやつ。
いつか使うから、と捨てずとっておいて良かった。
豚骨までとは言わないがスペアリブでもいいかんじでコクは出る。
ということで今回スープは作ってない。
まあ家で作るなら鶏ガラスープでもOK。
ちなみに希須林でじーっと作る行程を観察していたがスープは白濁していない清湯のように見えた。
担々麺を仕上げる
いよいよ仕上げ。
下準備で作った芝麻醬、海老の香味油、そぼろ肉、麺を用意。
ラー油と花椒、豆板醤も出しておく。
写真を取り忘れたが鶏ガラ豚スープも鍋で温めスタンバイさせておく。
芝麻醬80gと醤油タレ大さじ6、砂糖大さじ2、豆乳50cc、酢大さじ1を混ぜてタレを作っておく。(写真左上の青い器に入っているのがそれ)
タレは豆乳でコクを補強している。
お店では胡麻だけであのコクとクリーミーさを出していると思うが、自作芝麻醬の出来がイマイチで味見をした段階で全然コクが足りなかったので冷蔵庫にあった豆乳を加えることにした。
ここまでのカロリーを計測したらたぶんすごいことになっていると思う。
でも美味しいものは油と糖で出来ているらしいから仕方がない。
具に使う野菜炒め用の野菜も切っておく。
ニラはちょうど前の日に餃子を作ったからその残りを使う。5cm位に切る。
水で戻した乾燥キクラゲは細長く切っておく。
キクラゲは肉そぼろに入れるはずが入れ忘れていたので野菜炒めで使うことにした。
野菜炒めを作る。中華鍋に油を引いてもやしから強火で炒める。
さっと炒めたらキクラゲとニラを加えて塩を二つまみ。こしょうも少し。
シャキッと感を残したいので炒めすぎに注意。
どんぶりに一人前タレ大さじ5杯に香味油大さじ1を入れる。
辛いのが食べれない子供はこれだけでOK。
大人用にはこれにラー油と豆板醤をお好みでだいたい小さじ2杯分づつ追加。
香りと痺れ感を出す花椒パウダーも2ふり。
同時に湯を沸かしておき麺を茹でる。茹でる前にぎゅっと手でもんで少しちぢれを入れた。
茹で時間は細めの麺だったので2分半でちょうどよかった。
タレと香味油をセットした丼ぶりに鍋で熱々にしたスープ約300ccを注いで茹でた麺の湯を切り投入。
野菜炒めとそぼろ肉を乗っけて・・・
完成~。
見た目は結構それっぽく出来たじゃまいか。
スープは豆乳がいい仕事しててクリーミーな味わい。辛さも程よい。
でも胡麻だけであのお店クリーミーさを出すにはどうしたらいいのか、課題だな。
あとラー油が少なかった。1.5辛くらいだろうか。次は自作ラー油も作りたい。
そして海老油の香りが強い。
狙ってなかったが海老ラーメンで有名な「えびそば一幻」のような感じもある。
麺は希須林より少し太かった。あとちぢれが足りない。
だがほどほどにコシがあってうまい。さすが特飛竜。
スープが濃厚だから太麺でも合うと思う。
そぼろ肉はごはんに合いそうだ。炊いとけばよかったー。
結果的に希須林とは少し違う味になってしまったが好みの味にできた。
海老好きの嫁さんからも「うまい」といってもらえた。
替え玉をしていたのでよっぽど気に入ったのだろう。よかった。
ごちそうさまでした。