製麺機で港屋っぽい冷たい肉そばを作った話
虎ノ門に「港屋」という立ち食い蕎麦屋がある。
ここの人気メニュー「冷たい肉そば」は変わり種で、注文をすると丼ぶりに大量の蕎麦と豚肉、ネギ、きざみ海苔、胡麻が溢れんばかりに盛られて出てくる。蕎麦は黒くてゴワゴワっと荒々しいコシの強さがある。食べていて顎が疲れるほど。
このハードな蕎麦を冷たい麺つゆにつけて食べるのだが、その麺つゆもひと癖あってラー油が表面を覆っていてピリッと辛い。醤油の風味が濃くてでしょっぱ目だが卓上に置いてある生卵と天かす(無料)を途中で麺つゆに加えるとこってり感が加わって丁度いい感じのバランスになる。
肉&醤油&油&卵+大盛という野郎の心を掴む要素が詰まった満足な一杯だ。
しかしながら異常に量が多いのでその凶暴さから「蕎麦界の二郎」とも呼ばれているらしい。大食いの自分でも普通盛りで腹いっぱいになる。
いろいろと特徴的なので初めて食べる方は一般的なお蕎麦とは別のカテゴリーだと心して行くとよいかも。(ちなみに山形の「冷たい肉そば」ともまた別モノだ)
そんな港屋はサラリーマンに人気があり、昼飯時にはいつも店の前には長蛇の列。
自分もたまに食べたくなるのだが、職場からは数駅離れている上に、行列に並ばなければいけないし平日営業のみなのでなかなかチャンスがない。
なので自分で作ってみようと思う。
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<材料>
約3人前
※蕎麦と麺つゆは多めの分量で作る。
■蕎麦
- 蕎麦粉 400g
- 強力粉 80g
- 水 190g
■麺つゆ(多め)
カエシ
- 醤油 300cc
- 砂糖 80g
- みりん 80g
出汁
- 水 2リットル
- 昆布 10cm各3枚
- 混合節 40g
- かつお節 10g
ラー油
- サラダ油 90cc
- ごま油 15㏄
- ねぎ 15cm
- 鷹の爪 7~8本
- にんにく 1片
- しょうが 1片
- レッドペッパー 適量
- 花椒 適量
■トッピング
- 肉
- 豚細切れ 400g
- カエシ 大匙2
- 酒 大さじ1
- 出汁 大匙2
- ショウガ 一片
- たまご 適量
- きざみ海苔 適量
- 胡麻 適量
- ねぎ 適量
- てんかす 適量
蕎麦を打つ
※先に書いておくと蕎麦打ちを教わった経験はないので自己流です。
蕎麦粉は近所のスーパーで発見したので買った。一袋240gで290円位。小麦粉に比べるとやや割高感があるが、これでも安い方でもっと高い蕎麦粉もおいてあった。
強力粉は家二郎の時に余ったゴールデンヨットを使う。この2種類を合わせてゴワっとした歯ごたえを再現するために低加水で打つ。
蕎麦は打ったことがなかったので事前に何度か試しに打ってみたが、強力粉:蕎麦粉の割合を2:8の配合(いわゆる二八そば)、加水率は40%でそれなりの満足いく蕎麦ができたので今回もその分量で打つ事にする。
まず蕎麦粉と小麦粉を計量してボールで混ぜておく。手前のちょっと黄色がかっているのが蕎麦粉。もっと黒いのかと想像していたが意外に色は薄い。蕎麦粉の精製度合いにもよって色は異なるようだ。
計量した水を一度にざっと回し入れてすぐに菜箸で軽くかき混ぜる。
水は2~3回に分けて入れる派もあるようだが自分は1度に入れてしまう。(中華麺やうどんの時もそう)
水ではなく熱湯を使う方法もあるらしい。熱湯だとそば粉が糊化してつながりやすくなるというメリットがある反面、香りが飛んでしまうようだ。自分の場合は、事前に水で打って十分つながったので水でやることにした。
箸でざっくり混ぜた後、今度は手の指先を使ってやさしく細かく上下左右をひっ繰り返していくイメージでかき混ぜて水分を均等にいきわたらせていく。(水回しについてはこちらのラーメンの打ち方を解説した動画を参考にしています。)
3~4分混ぜ続けるとだんだんとしっとりして、勝手にまとまり始めて指先にくっついて来るポイントがあるのでそこで止めて、今度は一つの塊にまとめていく。
ボール状にまとめた。
製麺機で扱いやすいよう軽く麺棒で延ばす。
今度は製麺機の圧延ローラーで延ばして薄い帯状にしていく。(写真を撮り忘れた)
ちなみに通常の手打ち蕎麦は麺棒で1回延ばしたらOKなようだが、港屋の蕎麦のあのゴワゴワっとした堅いコシは複合圧延(生地を重ねて延ばす工程で中華麺やうどん作りでよくやる)により出してるような気もしたので2回ほど複合圧延をした。
製麺機がない場合はこのまま麺棒で薄く広く延ばせば良いと思う。(それが手打ちそばの正しい作り方だと思うので)
もしくはパスタマシンでもできると思う。加水率40%と柔らか目に仕上げた生地なので特に問題はないだろう。
暑さ2mm位の麺帯にしたら、余ったそば粉をくっつかないように打ち粉として振って今度は切り刃で麺を切っていく。この製麺機だと2mm幅くらいになる。
蕎麦完成。本物はもっと黒かった気がするまぁ良しとする。
ちなみに蕎麦は「三たて」といって「挽きたて・打ちたて・茹でたて」がよしとされるらしい。(立ち食い蕎麦屋のゆで太郎の店内に書いてあった。そのほうが味と香りがいいらしい。)だから中華麺のように寝かさずに打ったらその日のうちにすぐ使う。
麺つゆを作る
麺つゆは市販のツユでもOKだが、時間があったので手作りで。
カエシ
まずは事前にカエシ(ラーメンのタレのようなもの)を作っておく。自分は2日前に作ったが、本当は1~2週間くらい前に作って寝かしておくとよいらしい。
まずは鍋にみりんを入れて軽く沸騰したら弱火にして砂糖と醤油を加える。ふつふつと小さい泡がでてきたしたところで火を止めさます。砂糖は家にあった三温糖を使用した。
冷めたら熱湯消毒したしたペットボトルに移して保存。
出汁
昆布と節の合わせ出汁で風味よく。(ラー油で出汁の香りは打ち消されるのだけど)
まず昆布を1時間ほど水につけてから60度で1時間程じっくり煮出す。
昆布を取り出したら今度は中火にして混合節(さば、いわし、むろあじ)とカツオ花削りを追加して15分くらいグツグツと煮出す。灰汁は取り除く。
火からおろし漉したら、水で冷やしておく。出汁はこれで完成。
ラー油
刻んだネギ、ニンニク、ショウガ、鷹の爪、ごま油、サラダ油を弱火にかける。
程よく色づいたら、火を止めて、粉末のレッドペッパーと花椒を加えて完成。
自家製ラー油となるとスパイス等にこだわりたくなるが、今回は麺つゆに合わせるので香り過ぎないようシンプルに。ごま油も少な目にした。
ラー油完成。
トッピングを作る
冷たい肉そばの影の主役(と思っている)である「豚肉を甘辛く煮たやつ」を作る。
一口大に切った肉と麺つゆ用に作ったカエシと出汁、酒、しょうがを鍋に入れて煮る。
火が通ったら肉完成。あーもうこれだけでうまい。ビールが進む。
自分は食べたことはないが、以前の港屋では牛肉を使っていたらしい。色々な事情があって豚肉に変えたのだろうけど、牛バージョンだと卵を入れたときにスキヤキみたいになって美味しそうな気がする。今度作ってみよう。
仕上げる
予めカエシと冷やした出汁を1:3位で割って麺つゆを作っておく。(味を見て薄ければカエシを足す)麺つゆは器に盛り、ラー油を垂らしておく。
蕎麦を茹でる。茹で時間1分40秒位であげて氷水で締める。
丼ぶりに蕎麦、スライスしたネギ、肉、胡麻、海苔をどかっと盛る。
完成。海苔の肉で蕎麦が見えてないけどそういうビジュアルなんです。
でも、オリジナルと比べると肉と海苔の盛り具合がちょっと足りなかった。
アレンジして温泉卵をトッピング(温泉卵はコーヒーメーカーに湯と卵を入れて15分保温するだけ)した。ラー油、揚げ玉、生卵はお好みで。
いざ実食。
蕎麦はいい感じにゴワゴワっとしてる。しかし港屋には及ばないなー。本物はもっと黒くて強烈な歯ごたえがあったと思う。
麺つゆはおいしくできた。節系の香りが強くてラー油に負けていない。
ところで 港屋には「温かい鶏そば」なんてメニューもあるのだが早い時間に売り切れるので自分は食べたことがない。
じゃあ、それ、想像で作ってみましょうと。
※ここから番外編です。
鳥もも肉と麺つゆを鍋で煮て温かいつゆを作る。
ネギをかけた温かい鶏そばの汁(右下)。うーん、鳥の出汁が加わってこれもまたうまい。
港屋の迫力には及ばなかったが、美味しくできた。満足。
でもな、
やっぱ温かいつゆがいいなと。
せっかくなのでかけそばも食いたいなーと。
ってことで次の日、同じように余った麺つゆで鶏もも肉を茹でて、
上からくるーっと溶き卵を、
回し入れて、そばにかけたら・・・
親子そば〜(また海苔をかけすぎて蕎麦と具が見えない)
ここまで書いておいてなんだが、これが一番うまかった。
ラー油をかけないから出汁と蕎麦の香りを強く感じる。もっといい蕎麦粉でも打ってみたくなった。
「つけ麺」より「ラーメン」な自分にとってはやっぱり「もりそば」より「かけそば」の方が好みだなと。そう認識したのでした。
お粗末様でした。
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